動脈硬化と歯周病(歯槽膿漏)について

児島中央病院歯科医長 山本 友美

歯周病は動脈硬化の悪化因子になる可能性があります。

1つの原因だけで動脈硬化にはなりません。喫煙、糖尿病、体質、コレステロールのとりすぎ、肥満などが複雑に関係しあって動脈硬化になってしまいます。これら体質、糖尿病などは一般的によく知られた動脈硬化の危険因子です。しかし最近、これらの古典的な危険因子以外に「細菌などの微生物による感染」が原因として大きく関わっているのではないかということが注目されてきました。

動脈硬化の血管

動脈硬化の危険因子となる「微生物」の中の1つに「歯の周りに住む細菌」が含まれています。口の中というのは、適度な湿度、温度が保たれており、さらに食べかすなど細菌の栄養となるものが豊富にある所です。多くの細菌にとって、とても快適な住みやすい環境といえます。

歯には細菌が多数

口の中でも特に細菌が多く住み着いている場所は、歯の表面です。歯の汚れ(歯垢)の中には1ミリグラムあたり1億の細菌がいるといわれています。これは大便中の細菌数に匹敵します。
歯周病になると、歯の周りにある歯ぐきや骨が炎症をおこしている状態になるのですが、赤く腫れて出血しやすい状態のところに細菌のかたまりである歯垢が接しているのです。これは、怪我をして傷ついたところに大便がくっついているのと変わりありませんね。

歯の細菌と毒素

歯周病のような、歯の周りが炎症をおこしている状態になると、歯の周りに住む細菌や、細菌の出した毒素、炎症反応によって産生された物質が血中に進入しやすくなり、それが全身をめぐって血管に悪影響を及ぼしているのではないかと言われています。しかし、歯の周りに住む細菌がどのようにして動脈硬化にかかわっているかは、現在の段階ではまだはっきりと解明されていません。
このように動脈硬化の原因になっているかもしれない「歯周病」ですが、多くの人がかかっている病気です。そして、よほど悪くならないかぎり痛くならないのも特徴です。

歯周病にかかっていても「痛くないから自分はだいじょうぶ」と思い治療をうけないでいると、病気はますます進行して行きます。「歯を磨くと、はぐきから出血する」というのはりっぱな「歯周病の症状」です。該当する方は多いのではないでしょうか?

歯周病の治療は歯科医院、歯科のある病院でしてもらえます。具体的に、どのような治療が行われるか、一般によく行われているものを挙げてみました。

  1. 歯みがき指導 (実際に歯をみがいてもらって、みがき残しがないよう指導する)
  2. 大きくぐらついている歯を固定する。
  3. 歯石除去(歯の周りについた歯石を数回にわけて取っていく)
  4. 歯垢がたまりやすい所を修正する(不適合なさし歯などを修正)
  5. 手術(はぐきをめくって、深いところについている歯石を取る)
  6. メインテナンス(治療終了後、再び歯がよごれてきていないか経過をみる)

初期の歯周病(歯肉炎)の場合、歯みがきが上手にできるようになるだけできれいに治りますが、進行した歯周病の場合は抜歯、手術が必要になってきます。

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